『このニオイは何の匂いですかね?』


フラっと入ってきたお客さん(彼)がそう訪ねてきた。
何でも下にあるカフェの出口を出ると、その"ニオイ"に引き寄せられ
この店に来てしまったそうだ。ちょっと思い出のある場所の"ニオイ"と同じで、
ずっとその"ニオイ"を探していたら今その"ニオイ"がした、のだそうだ。

この店はちょっと独特の"ニオイ"があって店番のたびにその"ニオイ"を感じる。
店内は奥に花屋があり、沢山の緑にかこまれている、対外のニオイはその植物達のものだが
手前のセレクトショップからは多種多様のアイテムが並び、そこからも匂いがする。
キャンドルからは"香り"はしないがロウの匂いはする、
昭和の古道具や家具からは時代を重ねた"匂い"がする、アンティークの食器や生地からも
並んだ洋服からもそれぞれ素材の"匂い"がし、海外から集められた品それぞれに”匂い”がある、
もちろんこの建物からも匂いはするのだろうし、この辺りの土地の匂いもあるのだろう。



candlejune






























子供の頃、東京にある祖母の家のニオイがすきだった。何のニオイかは知らなかったが
そこは年に一度行けるかどうかの場所であり、行けば楽しい思い出ばかりの夢のような場所の
ニオイなのだ。
現実に戻ればすっかり忘れてしまい(というか思い出せない)
そして訪れた時だけ"ああ、このニオイだ、ばぁちゃんの家さ来たんだ"と感じるのである。

そんな事をすっかり忘れ、ずいぶん経ったある時たまたま居た東京でその"ニオイ"を感じた。
とっさにこのニオイは東京のニオイだ、何のニオイなんだろうね、等と話していいると
意外な答えが帰ってきた『多分下水の臭いです』たまに逆流して臭ってくると、
ちょっと恐縮した様子で教えてくれた。
ショックというより"あの東京のばぁちゃんの家のニオイ"の正体が分かってスッキリした気分になった。


鼻の神経と脳は直結しているらしい、
嗅いだ匂いはその時の思い出と連結されて記憶に残ると聞いた事がある。
ラベンダーの入浴剤のお風呂に入った時に、突然中学校の理科室を思い出したり、
たしか土曜日の放課後だったり、思い出せそうで思い出せない友達がいたような
気分になるのもそのせいなのだ。時をかけたりタイムリープした訳ではないらしい。



BOKWSKI






























店の窓をあければ外の緑の匂いがする、
時間によっては下のカフェのおいしそうなパニーニの匂いもする。
たまに隣から珈琲豆を焙煎する香ばしい匂いもする、色々混ざってこの店の"ニオイ"なのだ。
店内のあらゆる"ニオイ"の元を探しながら彼の思い出の場所の話を聞く、
記憶に直結している分、説明も繊細で立体的だ。
行った事もないその場所も今この場所と同じニオイだったんだ、と思いを馳せ、
いつしか自分もそこに行ったような気分になっていた。


『何だか居心地の良いお店ですね、また来てみます』そう行ってニコニコしながら彼は帰っていった。



ちょっと良い気分になりながら本日二度目の着替えをする、その日の気温33℃湿度55%
汗っかきにはちょっと大変な七夕のある日。






次回予告 実は"笹の葉ラプソディ"とタイトルを迷ったよ の巻

soldout1
soldout2




















































おかげさまでサルエルDENIM ドラゴン桜 完売です。
東京からわざわざお越しいただきありがとうございました。